伊勢新聞

2022年8月20日(土)

▼「BA・5対策強化宣言」について一見勝之知事が「21日で期限を迎えるのは厳しい」。五日からの期間中は精いっぱい我田引水して「宣言が出ているから行動を気をつけなければならないとの声も聞くので、一定の効果はあると思う」という程度のことで、狙いの「アナウンス効果」も賞味期限は長く続かない気はするが、引っ込みがつかないということだろう

▼このところ新型コロナウイルスとの戦いを戦争に見立てる論評は減ったが、8月ジャーナリズムを経て、なるほど似ているものだと感じ入った。コロナ側ではなく、人間側の対応が、である。旧日本軍はいずれの戦闘も短期決戦をもくろみながら、ずるずると引き込まれて戦線が拡大・長期化し、はたから見て一直線に無謀な戦いを続けて破滅した

▼思えば、ベトナム戦争もそうだった。米軍側は何度もやめようとしたが、それには大戦果をあげて停戦交渉を有利にしてからという思惑がうまくいかず、今やめるわけにはいかないと言い続けて敗れた

▼ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領も、短期決戦の狙いがはずれたという思いをかみしめているに違いない。有利な停戦合意に持ち込むことが今の目標で、それにはまず大戦果をあげて、ということだろう

▼経済回復を最優先にし、感染者の全数把握も、保健所の都合で「必要ない」という一見知事にとって、まん延防止等重点措置や緊急警戒宣言、緊急事態宣言への選択肢はないようなものだろう。トラの子のBA・5対策強化宣言にしがみつく一本道を突き進む以外、道はないのかもしれぬ。