伊勢新聞

2022年8月7日(日)

▼三重県の企画調整部長など歴任した竹内源一に『官僚の生き方 私の〝公僕〟人生』の著書があり「四日市公害・長良川河口堰・芦浜原発などの難局に真正面から取り組んできた著者が、率直な気持ちを綴った回想録」と紹介されている。その竹内が、日本の公害事件で初めて刑事責任を追及して〝公害Gメン〟と呼ばれた四日市海上保安部警備救難課長、田尻宗昭に協力を申し出て門前払いにされた。同書にある

▼知事というのは公害を取り締まる役目もあるが、一方で企業活動の振興策も図らなければならない。そんな二足のわらじを履く機関に公害撲滅などできるものか、というのである。「上級官庁を鼻にかけて」と竹内は唇をかんだが、一見勝之知事は大先輩の言葉をどう聞くか

▼毒まみれとされた当時の四日市港の水質汚濁と、急拡大するコロナ禍とは事情は違うが、その対策に、一見知事は東海三県で「BA・5対策強化宣言」を発令する一方、外出自粛などの行動制限や同一テーブルの人数制限などは盛り込まずに、旅行代金を割り引く「みえ得トラベルクーポン」も停止しない

▼県民への呼びかけが三点。「最大のポイント」が、高齢者らへの行動注意で「外出自粛ではありません。外出自粛のお願いではありません。感染リスクに注意をして行動していただきたい、(大勢集まるところへ行くのは)控えていただきたい」。感染リスクのある人への防止・対策が社会経済活動に必要だかららしい

▼宣言自体の効能は―。「大変な状況になっていることのアナウンス効果がある」。田尻の苦笑いが聞こえてくる。