伊勢新聞

2022年8月2日(火)

▼プラスチック資源循環促進法の4月施行で、プラスチックごみの回収が自治体の努力義務となったが、出足は鈍いらしい。「財源難の中、簡単に踏み切れない」という自治体が多く、仏作って魂入れずの状態が続いている

▼「周知活動を地道に行った結果、住民の理解も深まってきた」として東京都渋谷区は7月から一括回収を始めたという。住民説明会を30回以上重ねたというが、県内ではどうか。県がゴミのリサイクル活動が呼びかけたのは平成15年のRDF(ゴミ固形燃料)施設爆発事件が起きてからだ

▼ゴミ廃棄処分場建設に悩む市町に手を差し伸べるというのが、所管違いの一般ゴミに県が乗り出す大義名分の一つだった。目算違いの連続で腰が引け、撤退理由に焼却でなく、リサイクルを提唱した

▼土壌埋め戻し剤が有毒な産業廃棄物だったフェロシルト事件がリサイクルに水をぶっかけることになる。県のリサイクル製品に認定し、東海地区に広く使用されたが、実は公害をばらまいていた。なりふり構わずRDFから撤退した県に、リサイクルや地球環境を語る資格はあるまい

▼自治体がごみ回収に手を焼くのは、公園などからゴミ箱や灰皿を撤収したことでも分かる。河川や公園にプラスチックゴミが散乱。コンビニが家庭ゴミの捨て場となり悲鳴を上げているが、見て見ぬふりだ

▼十年ほど前、独ケルン市の邦人が、日本からのクリスマスプレゼントに途方に暮れていた。包装材が多く複雑で分別が徹底しているドイツでゴミ出しができない。送り返したいというのだ。日本の社会は変わっていまい。