伊勢新聞

<まる見えリポート>鈴鹿市に日本栄養士会災害支援車 被災地での食生活サポートへ

【災害支援車両「JDA‐DAT号」について説明する大槻准教授=鈴鹿市岸岡町の鈴鹿医療科学大学千代崎キャンパスで】

日本栄養士会による災害支援チーム「JDA‐DAT」は東日本大震災をきっかけに平成24年に設立。大規模災害発生時に被災地での栄養、食生活支援活動に取り組む。

今月1日、三重県鈴鹿市岸岡町の鈴鹿医療科学大学千代崎キャンパスに、同支援チームの災害支援車両1台が設置された。全国に6台あるうちの1台だが、認知度はまだ低い。県内の同支援チームリーダーは現在8人。そのうちの1人、同大学保健衛生学部医療栄養学科の大槻誠准教授(47)は「まずは一人でも多くの県民に活動を知ってもらいたい」と話す。

災害支援車「JDA‐DAT号」は、津市柳山津興の県栄養士会(井後福美会長)が、防災対策や啓発活動などの推進に向けて、日本栄養士会から管理・運用を委託された。

大学敷地内への車両設置は、同会が同大学に協力を依頼した。設置された災害支援車両は、給排水装置を備えたミニキッチンを搭載するほか、家庭用カセット式ガスコンロ、電気式ポット、電磁調理器などを装備した軽自動車。

平時は授業で学生の教育に活用したり、地域で開催する防災イベントなどでミニキッチンを利用したパッククッキングの実演など、広く一般の防災意識向上を促す。災害時には高齢者や乳幼児、慢性疾患患者など一般食品を食べることができない人たちを対象に、介護食や母乳代替食品、経管栄養剤などの特殊栄養食品を搬送する。

これまでに、熊本地震や西日本豪雨災害などで支援活動をしてきた。大槻准教授は「高齢者や乳幼児、障害者など災害時要配慮者の健康管理は難しく、栄養士や管理栄養士の果たす役割は大きい」と強調する。「あらかじめ自分たちで必要なものを備蓄しておくことは大切だが、我々の存在や活動について知っているということも重要」と語る。

県栄養士会の会員は現在、県内の栄養士と管理栄養士約550人。そのうち支援チームのスタッフとして研修を受けたのは約50人。リーダーはさらに、県会長の推薦を受けて日本栄養士会で3日間の研修を受けるという。

大規模災害発生時には、行政と連携して、避難所などに特殊栄養食品ステーションを設置したり、避難所を巡回して栄養相談などを受ける。

大槻准教授は今後の課題について「発生が懸念される南海トラフなどの大規模地震は、他県とのつながりや栄養士会同士の連携なども重要になってくる。連携した訓練などもできればと思うし、スタッフの人数ももっと増やしたい」と話した。