伊勢新聞

2022年6月27日(月)

▼鳥羽商船高専が皇學館大学と包括連携協定を締結した。学生や教職員間での文理融合による連携強化や地域課題の解決を目指すという。具体的意味や効能は分からぬが、「地域課題の解決」は、国立高専が独立行政法人国立高等専門学校機構のもとに再編されて以来、同機構の方針

▼「分野を横断した視点から多面的な展開を楽しみにしている」と鳥羽商船の和泉充校長。中身はこれからということだろう。昭和37年に開校した国立高専は時代の花形で、生徒は殺到。入試倍率は17倍ともいわれるが、日本の学制の中で位置づけはあいまいで、中卒から5年という独特の修学期間ももあって一時の熱が冷めると、将来に対する学生の不安は増した

▼途中退学で大学への進学、転学を目指す生徒も多く、高専はさらに2年の専攻科の設置や、大学工学部との進級協定などの対応を進めたが、高専機構設立とともに予算額の減少や1県1高専、学科の連携などを志向する動きが見られ、各高専自体も振り回されることになる

▼産業構造の変化の中で、全国五つの商船高専も例外ではなく、鳥羽商船にとっては平成21年の富山商船と富山高専の統合が衝撃で、鈴鹿高専との学部統合の検討、包括連携協定へ進まざるを得なくなった。入学志願者減少は特に深刻で、全国から来るのを待つのではなく、地元中学校を対象に入学案内に力を入れることになる

▼地域貢献の一環と地元での知名度向上の、当面は一石二鳥の狙いが「文理融合」にはあるのだろう。すぐれた技術が本格的に地域活性化に乗り出すことの意義は大きい。