伊勢新聞

2022年6月22日(水)

▼山口県阿武町の誤送信問題で、逮捕された男性が振り込まれた4630万円を「ネットカジノで全部使った」と供述したのは、真偽はともかく、理由としては陳腐なものだろう。横領、着服など、金にまつわる犯罪で、使途がギャンブルというのは珍しくない

▼南伊勢町立南伊勢病院で、30代男性職員の1億5千万円着服事件が発覚した。使い道が「アイドルのコンサートなど」というのは、額の大きさとともに驚かされる。ウソならもっとましなことを言う、というのが刑事ドラマなどでの当局側の定番ではないか

▼そんな人間だから、1億5千万円も着服してしまったのかと言ったら語弊があるか。全額弁済で話がついて事件にはならなかったが、昔JAで数千万円着服した男性は人懐こくて気のいい、悪さをする人間とは正反対に位置するタイプだった。何に使ったか明確ではなく、酒や物欲にだらしないのは話していて分かった

▼当日の決算を上司に報告したあと、鉛筆書きの帳簿を少しだけ書き換え、いつの間にか何千万円になっていたという。、何となく納得できる気がしたものだ

▼アイドルの親衛隊なるものの異様さはテレビなどで見る。年配者が、コンサートを見るため有休を取って地方から上京してきたと照れくさそうにインタビューに応えている番組もあった。韓流ブームなど、門外漢には分からぬ夢の国、幻想の世界が広がっているのだとすれば、ギャンブル中毒に似ているかもしれない

▼先のJAの話で、着服のきっかけは上司の乱脈な勤務ぶりを見て、だった。むろん今回と何の関係もない。