伊勢新聞

2022年6月7日(火)

▼太平洋の単独無寄港横断を世界最高齢で達成した海洋冒険家、83歳の堀江謙一さんが記者会見で「精神と肉体の完全燃焼を成し遂げた。今は青春の真っただ中です」。目標は「生涯チャレンジャー」

▼80歳で3度目のエベレスト登頂に成功した冒険家、三浦雄一郎さんも「90歳で生きていたら、もう一回トライしたい」と語っていた。「病気やけがをしても希望と夢を持つことが大事。人間は目標を強く持てば年をとっても元気に生きていける」

▼関心が一つ一つ消えていくかのような高齢化の中で、気持ちのあり方の大切さを教えてくれる。堀江さんが小型ヨットによる太平洋単独無寄港横断に成功した60年前は、国中が熱気に包まれた。無断航海で、米国サンフランシスコに入港した時は密入国者扱いを受けて取り調べられたというエピソードさえ、英雄の行動と見なされた。ヨットなどとは無縁だったにもかかわらず、石原裕次郎主演映画『太平洋ひとりぼっち』を見に映画館に向かった。初めての裕次郎映画で、単調な内容に退屈したのを覚えている

▼今度の最高齢達成も、多くの人を感動させ、希望を与えたに違いないが、60年前との海の違いについて「漁具などの浮遊物がほとんど見かけないくらいにきれいになっている。海に出る方のマナーが向上したからではないか」

▼海洋投棄の規制が厳しくなったからだろう。ニュースは同時に深海1000メートルにプラごみが堆積し、海底を汚染していることを伝えている。海に関わりのない人のマナーが悪くなり、海への負荷が甚大になったことを物語っている。