伊勢新聞

2022年6月5日(日)

▼長期計画「強じんな美し国ビジョンみえ(仮称)」などで、三重県は施策ごとにKPI(重要業績評価指標)を設けたが、数値目標としては扱わない方針。「柔軟な美し国ビジョンみえ」への改称にも映るが、議会から「しなやか」の文言を入れるように言われ「強じんに含まれる」と採用しなかった。柔軟も同様かもしれない

▼「目標はあくまでも目指す姿を達成すること。KPIは施策の進行度を図るための指標で、これ自体が目標ではない」と、KPIと、数値目標の違いを説明したという。ただちに理解できる県民がどれだけいるか

▼県の施策にカタカナ語が多く、県民に分かりづらいではないかという議会の指摘に「国の施策にカタカナ語が多く」と釈明したのは田川亮三元知事。KPIは四、五年前に登場したビジネス用語。ネット検索で「KPIとは何か」の項目が上位にずらりと並ぶ。県民の理解に無関心なのが県の習性かもしれない

▼北川県政が長期、実行各計画の目標値を定め、8割達成を聖域なき義務とした時、「教育に八割達成すればOKという発想はない」と批判したのは県教職員組合副委員長だった。少子化問題で、合計特殊出生率の目標設定を迫られ「数値は持ち合わせていない」と抵抗したのは鈴木英敬前知事

▼女性の出産の自由を侵害するという非難の回避と受け止められた。行政と数値目標は不可分と言われる。棚上げが横行するからだが、数値化できるものだけ対象、効果の上がるものだけ取り組み根本的対策は先送り、などが欠点とされる。成果はともかく、欠陥はさらに拡大しそうだ。