伊勢新聞

2022年6月4日(土)

▼県内の交通事故死者が5月はゼロだった。1カ月の死者ゼロは、統計を取り始めた昭和28年以降、初めてという。賀すべし

▼交通事故関係といえば、県民は長い間、肩身の狭い思いをしてきた。全国で死者の減少が顕著の時、県だけはひとり増加の一途で、一体どうなっているんだという県議会の質問に、他県から赴任したばかりの県警本部長が「県民のマナーが悪い」。事故当事者は通過交通者ではなく、圧倒的に県民と断定された

▼シートベルト着用率の低さも指摘されたが、最近もっともショックだったのは、平成元年のJAF(日本自動車連盟)の調査で、信号機のない横断歩道での車の一時停止率が全国最下位だったこと。その数年前、停止率が悪いと愛知県がキャンペーンをしていて、停止義務を知らぬドライバーの多いことが報じられていた。対岸の火事ではなかった

▼5月の死者ゼロについて、県警交通企画課は交通安全教室などでのシートベルト着用促進の啓発活動の成果としている。悪い時は「県民のマナー」のせいで、よくなったら県警の活動のたまものかとは苦笑させられたが、事故件数そのものは増加している。シートベルトで命が守られているという県警の言い分はその通りかもしれない

▼右折車線をのろのろ運転し青信号でそのまま直進していったのを見たのは数日前。横断歩道前の一時停止はずいぶん改善したが「まだ2台に1台は停まってくれない」というのは県警で、後部座席のシートベルト着用率5割はJAFの調査

▼規則順守もだが、マナー改善の道のりは、まだ遠そうである。