伊勢新聞

2022年5月31日(火)

▼三重県立高校1年男子生徒がいじめを受け手自殺した問題で、いじめ対策審議会がいじめ重大事態の対処に関する答申を県教委に提出した。「いじめの事実を確認できないことを理由に重大事態の認定を拒むことは許されない」と指摘している。生徒側の申告から重大事態と認定するまで、県教委は約1年を要した。審議会は、これを「認定の拒否」とみなしたのだろう

▼また、遺族との訴訟で、男子生徒の担任であり部活顧問の教諭がいじめやその兆候を把握していながら積極的対応をしない注意義務違反の責任を問われたことに県教委は「いじめについて知らなかったため、自殺を予見することができず注意義務違反はなかった」と主張した。審議会答申は、この主張に真っ向から反論した形だ

▼「いじめ防止対策推進法や関連ガイドラインなどの趣旨を誤解したものと考えられる」とまで踏み込んだが、答申を受けた木平芳定教育長は「熱心に審議し、答申をまとめていただいたことに感謝する。答申をしっかり受け止め、今後の対処に生かしたい」。のれんに腕押し、ぬかにくぎ―。県の教育は大丈夫なのかと心配になる反応の鈍さだ

▼自殺といじめの因果関係を認めた県いじめ調査委員会の答申を受け、一見勝之知事は県教委に実務者レベルの再発防止会議設置を要請するとし、別に子ども・福祉部と県教委共同の「いじめ防止対策ワーキンググループ」設置も。学校現場で失われた命に対し、当然の反応と見られるが、木平教育長とのあまりの違い

▼児童生徒の命より裁判に勝つことが先決というわけでもあるまいが。