伊勢新聞

2022年5月30日(月)

▼「地球規模で考え、足元から行動せよ」は環境問題のスローガンとして世界的に知られ、県サステナビリティレポートの前身、環境白書の背表紙にも刻まれた言葉だが、一見勝之知事が二酸化炭素排出量の削減策として宅配の再配達削減に取り組むと発表した

▼二酸化炭素排出量の総量が11億トン。うち運輸部門は、産業部門に次ぐ2億トン。再配達での排出量は42万トンというから申し分のない「足元から」の行動ではある。「国を挙げて二酸化炭素の排出削減に取り組む中で、再配達の削減は非常に大きな取り組み」と一見知事。「考えは地球規模で」ということだろう

▼事業費は約36万円で、半額が国の交付金。配達の日時指定やコンビニ受け取りなどの活用を呼びかけるポスターやチラシを公共施設や宅配事業所に設置する。取り組みはささやかだ

▼思えば、県に温暖化対策課ができてどのくらい経つか。これまで取り組みはもっぱら計画の策定で、具体的な行動は目立たなかった。令和元年12月に脱炭素社会の実現に向け取り組むことを決意し、「ミッションゼロ二〇五〇みえ~脱炭素社会の実現を目指して~」を宣言したが、行動計画は見当たらず、これも宣言の表明にとどまっている

▼今回は宅配業者との連携事業というのが目新しいということか。要は、宅配業者も再配達問題は頭痛の種で、行政への期待が大きいのだろう。コロナ禍で、デリバリー事業の躍進が目立つ。逆行する試みがどこまで成果をあげるか。県は、業者のアプリなどの積極的利用を呼びかける。互いに損はないことではあろう。