伊勢新聞

「まる見えリポート」志摩で島しょ国・自治体会議 課題共有、連携深まる G7閣僚会合誘致へ自信に

コロナ禍による2度の延期を経て、地方自治体と太平洋島しょ国との連携強化に向けた「第2回太平洋島しょ国・日本地方自治体ネットワーク会議」が17、18日の2日間にわたり三重県志摩市などで開かれた。一見勝之知事は「閣僚会合を開くにふさわしいとあらためて強く思う」とし、表明している主要7カ国首脳会議(G7サミット)関係閣僚会合の開催誘致を見据えた自信をのぞかせた。

会議にはミクロネシア連邦▽サモア▽トンガ▽マーシャル諸島▽パラオ▽フィジー―の6カ国の大使と三重をはじめ11県の代表者、外務省とJICA(国際協力機構)、国際機関太平洋諸島センターの担当者など約50人が出席した。

前年度に開催されたオンライン保健医療セミナーや、トンガ沖で発生した大規模噴火災害に対する支援などの活動が報告されたほか、人的交流と人材育成について提案や意見が交わされ、最終的に医療保険と環境、スポーツの3分野で連携を深めることで合意した。

会議後の意見交換では、コロナ禍による観光収入の激減を背景に投資や交流を求める意見や、連携強化に向けた具体的なアクションプランの策定を進める考えなどが提案されたという。

ミクロネシア連邦のジョン・フリッツ特命全権大使は会議後の会見で、若者を中心とした積極的な交流の必要性を強調。有人離島など県との共通点を例に挙げながら、「人と人との絆を深めて三重県とも関係を強化したい」と話した。対する一見知事は「重点課題を中心に可能な限りリアルの会議を追及しながら交流を続けたい」と話していた。

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【離島でのオンライン診療について小泉医師(中央左)から説明を聞く大使ら=鳥羽市の鳥羽マリンターミナルで】

会議の一環として大使らは2日目、志摩市と鳥羽市内を視察。志摩市では海女小屋体験施設「さとうみ庵」(志摩町越賀)で海女文化を通じて環境保護や持続可能な漁業について説明を受け、鳥羽市では有人離島をつなぐオンライン診療についての取り組みを通じて自国との共通課題や対策につながるヒントを探った。

鳥羽市では、人口減少と高齢化を背景に四つの有人離島に点在する診療所で電子カルテを共有し、タブレット端末などを利用した遠隔でのリモート診療の取り組みが進められている。

視察では、鳥羽マリンターミナル(鳥羽1丁目)に特設ブースを設置し、取り組みを提案した神島診療所の小泉圭吾医師が実演を通じて仕組みを説明し、大使らの質疑に応じた。

トンガのテヴィタ・スカ・マンギシ特命全権大使は「170以上の小さな島々を抱える国として、同様のシステムに取り組みたい」と話していた。

全体会議の舞台となった志摩観光ホテル(志摩市阿児町神明)は、6年前には先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)の主会場としても利用された。歓迎夕食会では、伊勢エビやアワビなどの県産食材にココナッツなどの素材を加味した料理や県産の酒などが提供された。担当した営業企画部の松本利奈課長は「サミットでの経験を生かして無事お迎えできてほっとしている」と話していた。

PRブースでは、各自治体や関係団体がパネル等を通じて活動を紹介。公益財団法人国際環境技術移転センター(ICETT)は県の委託事業としてパラオで実施しているごみの分別処理の取り組みについて紹介。志摩市は市内の小中学生が島しょ国に向けて描いたポストカードを展示した。

県と共にG7サミット関係閣僚会合の誘致を目指す橋爪政吉志摩市長は、「情報共有など実りある時間につながった。今後に向けた気運醸成につなげたい」と意気込みを語っていた。