伊勢新聞

2022年5月21日(土)

▼差別解消条例案が県議会で全会一致で可決された19日、国では「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が成立した。条例は、被害者側から相談で県が相手側との間に介入し、解決を目指す内容。国の法律は、障害者の情報格差是正を国に義務づける。一口に差別解消と言ってもさまざまな視点がある

▼鈴鹿市は同日、同市地域防災計画を修正し、避難を呼びかける市独自の「いのちの鐘」を取りやめることにした。災害時に消防団員が寺院の鐘を乱打して危険を知らせる取り組みだが、インターネットを活用した安全で確実な情報伝達手段に置き換わる。こちらは視覚障害者や、高齢者などIT難民の情報格差問題などは想定外なのだろう

▼市防災会議に諮った原案に、委員からの意見はなかったという。県の防災会議も、各階各層の代表約60人の中に各種障害者や高齢者団体代表はいないが、鈴鹿市の委員も似たような構成なのに違いない。県議会事務局によると、差別全般への介入を県の責務として定めた条例は全国の都道府県で初めて。差別について「人種などの属性を理由とする不当な区別、排除または制限」と定義を明記したのも珍しい

▼実効性とはまた別の〝一番自慢〟か。県や県の市町のほとんどが人権宣言をするようになったが、後発になるに従い、内容がマイルドになって、焦点なきスローガンになっていく傾向があるといわれる。各審議会など意思決定機関に女性の参加を促すがごとく、まずは被差別、弱者側の主張をどう取り入れていくかの視点を模索する必要があろう。