2022年5月17日(火)

▼近づく参院選を前に、本紙展望は「今のところ岸田政権は安全運転をしており、選挙を揺るがすような逆風は吹いていない」。一時の参院無用論はこのところ下火だが、とするなら、何を目安に投票すればいいのか

▼立憲民主党と国民民主党の推薦を受ける無所属の芳野正英氏の決起大会で、芳野氏は「新型コロナで傷ついた地域経済を復活させる」。自民公認で公明党推薦の山本佐知子氏も総決起大会で「新型コロナで社会が内向きになっている。もう一度、希望を持てるようにする」。同じことを言っているように聞こえぬでもない

▼選挙を揺るがす逆風はともかく、憲法の存在を揺さぶる風は吹いている。コロナとロシアのウクライナ侵攻を受け、日増しに勢いを強めていると感じるのだが、両陣営とも栁を決め込んでいるかのようでほとんど触れることがない

▼また、芳野陣営を構成する国民民主党が政府予算案に賛成した。自民党はまた、連合を想定するかのような労働組合との連携を運動方針の中に掲げ、連合も呼応しているように見える。国民の目にはこうした分かりにくい状況が広がっているのに、両陣営とも、そんなことはなかったかのように、従来の枠組みを構築し、従来通りの運動を展開するように有権者に見せている

▼コロナ禍は我々が築いてきた社会のひずみ、欠点を教えてくれた。ウクライナ侵攻は、どんなきれいな約束事も、行使する側の大義名分の前には書き損じた紙同然に踏みにじられてしまうことを思い知らされた。参院選とその後に、それらのミニチュア版が横行するのは見たくない。