▼初夏の気持ちのいい25日の津市郊外の公園に突然サイレンの音が響いた。消防車五台余り三方から近くの住宅前に集結。火は見えず、煙は野焼きとの区別がつかない。消防団員が十人ほど、ホースを持って走る。急いで向かったが、火元が確認できないまま、ホースが片づけられた。「火災は鎮火しました」とマイクで報告する声が聞こえた。約十分ほどの出来事だったろうか
▼北海道・知床半島沖での観光船遭難事故のニュースに接していたせいか、けたたましいサイレンが大型連休への警鐘のような気がした。四人救助の第一報にホッとしたのは誤りで、救助十人全員の死亡。さらに三歳の女児の死亡と続き、乗客乗員26人全員の絶望が伝えられた
▼新型コロナウイルスなど未知の感染症におびえるのとは違うとはいえ、遊覧船のイメージとは裏腹に、秘境に近づくことの危険を改めて痛感させられた。運航会社の安全意識が報じられているが、クジラ見学やオーロラ観光などの体験記を読むと、日程をやりくりして訪れた観光客は多少の無理をしても目的の光景を見たいと願い、案内する側も希望をかなえてやりたいという思いが強く、時に危険に巻き込まれる
▼世界遺産登録の地の自然のすさまじさの中で、岸壁に急接近を繰り返す行為が人気にもなっていたという。恐怖と快感が同居するという人間の心理に驚かされる。安全な危険と真の危険との区別ができなくなっている時代なのかもしれない
▼言うまでもなく、危険は日常と隣り合わせにある。十分ゆとりと諦める勇気をもって大型連休を楽しみたい。