伊勢新聞

2022年4月5日(火)

▼ドメスティック・バイオレンス(DV=家庭内暴力)や性被害、生活困窮などの女性支援を強化する新しい法案がまとまった。ご同慶の至り。現行制度は売春防止法に基づいており、支援団体から「実態に合わない」との声が上がっていた

▼同法は売春する恐れがある人の補導や保護更生が目的なのは周知の通り。施行は昭和37年10月1日。60年前の法律で女性を救済していたのだから当然といえば当然の声。ついでに言えば、所管するのは内閣府男女共同参画局。男女共同参画社会実現のためとして県をはじめ行政機関が「女性」に名称変更した「婦人」名が婦人相談所、婦人相談員など、いまだに残る

▼ガラパゴス化した機構で社会の最先端の課題を処理していた格好だが、行政機構にはそう珍しいことではないのかもしれない。例えば昭和23年公布の医師法は幾多の改定を経たが、当時の規則は今も生きている。15年前、父から医院を引き継いだ亀山市の医師は新規開業者と見なされて厚生労働省にそのための書類提出を義務づけられた。その中には「薬局の窓の寸法」や「天秤計量器の有無」の欄があり、窓にしがみついて測ったり、蔵から父が開業時に使っていた「天秤計り」を探し出したという

▼医師免許取得三年後の結婚で免許再交付の対象となり、新しい免許証には旧姓は跡形もなく消えていた。「自分の過去が消されたような…虚しくて悔しい思いをした」。75年前の医師法が生きている「日本は不思議な国」だとして、80歳になった今も、旧姓の医師免許を返してほしいと願っている。