岡山市の環太平洋大陸上競技部4年の源裕貴選手(22)=山口県出身=が今年春、桑名市に拠点を置く実業団チーム、NTNに加入する。昨年男子800メートルでリオデジャネイロ五輪代表の川元奨選手(スズキ)が平成26年に出した日本記録1分45秒75を出して注目された。全日本実業団対抗駅伝で通算57回の出場を果たす一方で、平成16年に1500メートルで小林史和選手(現愛媛銀行監督)が27年ぶりに日本記録を更新するなどトラック競技でも実績を残す三重の古豪でさらなる高みを目指す。
■
美祢青嶺(現青嶺)高校に入学後、陸上競技の練習を始めた。中学まで陸上の競技会に出るのは中学校の駅伝代表として地元の大会に出場する程度だったが、父は長距離、母は短距離の、ともに陸上経験者。特に父・清美さんは母校の前身の美祢工業高校3年時の昭和55年、京都市で開催の全国高校駅伝で1区4位に入った全国区の選手だったこともあり、長距離と短距離の中間の中距離で頭角を現す。
高校3年時の平成29年に800メートルで山口県高校総体で初優勝すると中国高校総体で準優勝し、初の全国大会となる全国高校総体に出場。秋に開催の愛媛国体少年男子800メートル決勝で6位に入り全国初入賞したことで手応えをつかみ、以前から熱心に勧誘してくれていた吉岡利貢教授が陸上競技部を指導する環太平洋大に進み、800メートルを究める決意を固める。
陸上競技を始めた当時から美しいランニングフォームを追い求めてきた。大学入学後は現在日本陸上競技連盟のオリンピック強化コーチも務める吉岡教授の進める科学的トレーニングを採り入れ、めきめきと成長した。令和元年に日本学生陸上競技個人選手権で全国初優勝すると、同じ年の日中韓3カ国交流大会の代表に選ばれ、初の日本代表入りを果たした。
陸上競技部主将も務めた大学4年目の昨年は飛躍の一年だった。日本記録保持者の川元選手に先着して1分48秒52で1着を奪った4月の東京陸協ミドルディスタンス・チャレンジを皮切りに1分40秒台の記録を続出。7月に北海道で行われたホクレンディスタンスチャレンジで1分45秒75の日本タイ記録を叩きだした。
低酸素トレーニングに対応した施設など大学の練習環境は企業チーム顔負け。卒業後も大学を拠点に活動する選択肢もあったが、県外の実業団に進む道を選んだ。中距離の練習への理解に加えて、高校時代仲間と取り組んだ駅伝への魅力が決め手になったという。「中距離選手もスタミナを鍛えれば駅伝につながるのではないか。競技生活は何年も続けられない。何でもやってみたい」と意欲を見せる。
むろん、中距離の練習にも打ち込む。800メートルの自己記録は今年7月、米・オレゴン州で開催の世界選手権の参加標準記録1分45秒20に迫っている。4月以降順次行われる日本グランプリシリーズで結果を残して初の世界選手権出場に挑む。1500メートルへの挑戦も視野に入れる。
「もともと走っていた長距離に800メートルのスピードを組み合わせればという思いはある」と源選手。小林選手を指導した経験を持ち、環太平洋大の吉岡教授とも定期的に情報交換するNTNの越井武吉監督は「日本一のロングスプリントを生かして1500メートルでパリ五輪を狙わせたい」と意気込む。