伊勢新聞

<まる見えリポート>一見知事就任から半年 堅実、気さくさ強調 自身の発言に「危うさ」も

【定例記者会見で、就任から半年を振り返る一見知事=県庁で】

一見勝之三重県知事が就任してから14日で半年がたつ。「一見カラー」が施策に現れるのはこれからだが、新年度の当初予算や幹部人事などを踏まえると、堅実な印象。今年に入ってからは公の場で踏み込んだ発言が目立つようになったほか、気さくな印象を持ってもらおうと努めている様子もうかがえる。ところが、県幹部からの評判はいまひとつ。県議会での答弁が一部に波紋を広げたほか、定例記者会見では発言を巡る〝トラブル〟も。自らの発言には、いささか「危うさ」を秘めているようだ。

鈴木英敬前知事の国政転出に伴う知事選で勝利した一見知事。三重とこわか国体・とこわか大会の中止判断や新型コロナウイルスの対応、新年度の予算編成や人事など、あらゆる対応に追われた半年だった。

この間、県庁で大きな不祥事はなかった。昨年11月には財政調整基金への積み立てを失念する問題が発覚したが、これも就任前の話。スキャンダルもなく、ひとまずは公私とも安定飛行といったところか。

4月からは市町長との対話が控える。県政の方向性を示す長期計画「強じんな美し国ビジョンみえ」と中期計画「みえ元気プラン」の策定作業も大詰めを迎える。これからが「一見カラー」の見せどころだろう。

口数が少ない印象は年が明けて一変した。年頭訓示では「配慮すべきは知事や業界、議会ではない」と力説。感染防止対策の呼び掛けでは「私の話を聞いてもらえば被害を最小限に抑えられる」と語った。

親近感を持ってもらおうと努めているらしい。「ごみを持って廊下を歩いていた」と、ある職員。一般質問の答弁では冗談を披露して議員らを笑わせることも少なくない。「元官僚」と呼ばれることも嫌う。

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一方、県幹部からは良い評判が少ない。一部の職員は「実直」「しっかり判断してくれる」と高く評価するが、多くは「会議の時間が長い」「記者会見と議会で言うことが異なる」などと不満そうだ。

踏み込んだ発言にはリスクも伴う。1月の県議会全員協議会では知人の言葉を引用し、時短要請の協力金を受ける飲食店は「焼け太りのようなところもある」と発言。すぐさま県議から抗議の声が上がった。

一見知事は8日の定例記者会見で、自らの発言について「まだ半分以下しか言っていない。思っていることを全て言うと、大変なことになる」と説明。知人から「気をつけろよ」との手紙を受け取ったことも紹介した。

「問題のあった発言はなかったか」。この日の定例記者会見では、公の場で発言する機会があるたびに、そう職員らに確認していることも明かした。やはり、知事も発言の「危うさ」は認識しているようだ。

ところが、この会見で早速にして発言を巡る問題が発生。いじめの事案に関係して非公表の情報を言ってしまい、職員らが〝事後処理〟に追われた。知事自身の発言が県政の今後を占うことにもなりそうだ。