<まる見えリポート>鈴鹿サッカースタジアム着工 いまだ返済計画示されず

【建設が始まったサッカースタジアムの完成予想図(鈴鹿市提供)】

鈴鹿市住吉町の三重県営鈴鹿青少年の森公園内で9日、市を拠点に活動する日本フットボールリーグ(JFL)所属チーム「鈴鹿ポイントゲッターズ」の運営会社らによるJリーグ規格のサッカースタジアム建設工事が始まった。一方、全額金融機関からの借入という工事費用8億円の返済計画はいまだに示されておらず、将来的な見通しが不透明な状態が続く。

当初の昨年6月着工予定が大幅にずれ込んだこともあり、令和5年3月の供用開始に向けて急ピッチで工事が進むのかと思いきや、25日現在、現場には工事予告の看板が設置されたまま、大きく進展の様子はない。

チーム運営会社のアンリミテッドに確認すると「中断の指示は出していないので工事の準備もあるのだろう。全て業者に任せてある」と話す。担当の市スポーツ課は「園路の付け替えに向けた事前の準備段階ではないか。本格的な工事が始まる前に看板を変えてもらえば問題ない」とのこと。本格的な工事が始まるまでには、もうしばらく時間がかかるようだ。

建設に反対する市民団体「鈴鹿青少年の森を愛する会」は、問題の一つにチームの財政的な柔弱性を挙げる。会員の一人、宮本秀子さん(67)=同市郡山町=は「会社の資金力など具体的に説明してくれないので賛成もできない」と、発信される情報の少なさに不安をのぞかせる。

スタジアム建設と管理は、市が県から設置許可を得て、アンリミテッド(吉田雅一社長)=同市住吉4丁目=と、関連会社ノーマーク(西岡保之社長)=東京都港区=が共同で進める。

市と2社は令和3年6月にスタジアム設置と管理に関する協定を締結しており、施設の設置や設置に伴う公園機能復旧にかかる費用は2社が負担することや、原状回復の義務を2社が負うことなど、16項目を取り決めている。

12月定例議会で市が明らかにした2社の企業概要や業績によると、アンリミテッドは資本金9950万円、従業員13人で、同チーム運営をはじめ、フットサル場の運営、ジュニア世代のサッカースクール事業などのほか、インターネット広告代理店事業やメディア事業をする。直近の売上高は4億9700万円、経常利益4600万円。

ノーマークは資本金2億1000万円、従業員27人で、インターネット事業を中心とした多角的な事業展開のほか、スポーツ関連事業も手がける。直近の売上高は41億1800万円。経常利益6300万円。

1月28日、吉田社長は同市御薗町の三重交通Gスポーツの杜鈴鹿で記者会見を開き、「鈴鹿に正真正銘のフットボールタウンをつくり、子どもたちの夢をつくること、そしてこの町の老若男女のみなさんに生きる活力を与えること、それが私たちの使命」とスタジアム建設への熱い思いを語り、「最終的には観戦客1万5000人のJ1規格を目指す成長型スタジアムとしてスタートを切りたい」と意気込みを見せた。

敷地面積約5万平方メートルに、J3規格で観戦客5000人収容のスタジアムとクラブハウス、多目的グラウンドを整備する。

人工芝の多目的グラウンドは市民に一般開放するほか、防災面でも活用していく考え。「公益性の高い施設」として、県は市の公園使用料を全額免除する。

一方、吉田社長は8億円の返済計画についての質問には回答を避けた。さらに、建設費の8億円以外にも、J3規格の照明設備が別途必要となることを明らかにしたものの、上積みされる見込み額については言葉を濁した。

着工後の今月下旬にアンリミッテッドに再度確認したところ、丸山謙介広報部長は「現段階で回答することはできない。タイミングが来たら発表する」と答えたが結局、その「タイミング」が、いつのことなのかは分からなかった。

市スポーツ課の田之上勉主幹は「チケット収入やグッズの売り上げなど漠然とした話は聞いているが、具体的な返済計画は聞いていない。今後詰める必要がある」と話す。

チームはサッカー元日本代表三浦知良選手の期限付き移籍で、知名度や注目度が上がっている。ファンの期待も大きい。

「公益性の高い施設」との評価を受けて公園使用料を全額免除で利用する以上、建設費の税金投入はなくても市民の見る目は厳しくなり、透明性のある丁寧な説明が求められる。サッカーへの熱い思いと同じ熱量の真摯(しんし)な対応が、結果としてチームの夢をかなえることにつながるのではないか。