伊勢新聞

2022年2月28日(月)

▼上手の手から水が漏れたか、氷山の一角か。またも―。生徒側からいじめの訴えを受けた県立高が調査を開始したのが1年後で、第三者を含む調査委員会は不登校重大事態と認定した上で、学校側の初動や組織としての対応の不備を指摘した

▼これまで「遺族の気持ちに添えなかった」と陳謝もした県教委だが、学校側が同じようなことをしたのにはカチンときたか。文部科学省がガイドラインなどで生徒側家族の不信感が解決を困難にしていると是正を求めているが、県立高も、その前の中学校も、重大事態の認識を持ちながら事実上、隠蔽(いんぺい)してきた

▼重大事態としての対応を求める父親に対し、市教委は①問題がオープンになり、生徒が耐えられない②調査が(これまで)以上になる―など、スクールセクハラと同じおためごかし、実質〝脅し文句〟を並べていた。県立高委員会の聞き取りには「迅速な対応が重要だった」と回答。本音と建前の使い分けも明らかにした

▼父親が加害生徒のクラスからの排除を求めたのに対し、中学校は被害生徒を個別授業などで逆にクラスから切り離した。高校での不登校で父親は再度重大事態対応を求めたが回答はなく、現状把握の調査が続くだけ。転校を申し出たが、学校は重大事態の扱いに不満なのではなく「進路変更」と捉えた

▼調査委設置は転校の5カ月後。目的は学校、教委の対応が「適切であったかを考察し、今後の再発防止を提言する」。事件は生徒の心に深い傷を負わせたまま、組織機構には何の爪痕も残さず、いずこも同じ再発防止策がまた一つ屋上屋を重ねる。