2022年2月26日(土)

▼「でも、やはりローマです。ローマです」というのはオードーリー・ヘップバーン主演の映画『ローマの休日』のラストシーン。各都市を歴訪した王女が一番好きな町を記者団に聞かれ「どこの町にもそれぞれの良さがあります」と切り出してから、一転させる

▼後者はえこひいきしてはならないという王女としてのたしなみ、前者は楽しかったローマの日々が突き動かした肉声とされる。帝王学というのはそのようなものなのだろう。昭和天皇が米誌のインタビューで影響を受けた人物を問われ、明治天皇以外は歴史上の人物の名もあげなかった

▼子孫への影響に配慮したといわれる。神経の使い方は下々の想像を絶する。北川正恭元知事が衆院議員時代は自身を坂本龍馬になぞらえたことはよく知られる。維新の志士というわけで、司馬遼太郎著『竜馬がゆく』が描く坂本龍馬だ

▼平成七年の知事選挙で、対立候補だった前副知事尾崎彪夫の「横顔紹介」取材の場に居合わせたことがある。「尊敬する人物」を聞かれ「北川さんは坂本龍馬と言うんだろうなあ」としばし宙を見つめ、父親の名をあげた。どういう親かはすっかり忘れたが、元副知事自身は気配りの人といわれた

▼一見勝之知事は県議会で、尊敬される人たれと励まされ、かつて仕えた冬柴鉄三国土交通相(平成18―20年)をあげた。「1ミリでも近づけるよう頑張りたい」とし「今も難しい問題があると心の中で相談する」。政治家に賛否両論は付きものだが、棺を蓋いて11年。すでに評価は定まっているということか

▼帝王学には、むろんほど遠い。