伊勢新聞

大観小観 2022年2月21日(月)

▼三重県予算案の本紙連載企画最終回がシーリングについてだった。各部局の要求額に一定割合削減の上限を定め、新企画には差額プラスアルファを与える手法だが、見出しが「長年緊縮で企画力低下か」だったのには改めて目を見張った。企画力があった時代があっただろうか

▼差額プラスアルファというのはもともと県がシーリングを始めた時の仕組みで、理由は新企画の枯渇脱却。職員が何より優先する予算確保を〝褒美〟とすれば、おざなりの企画力も少しは改善されるのではという狙いだ。結果は大方が継続事業の中身はそのままに名目を変えて新規事業に装うかの腕を競っただけだった

▼収益事業が失敗を重ねてたのは究極のRDF(ごみ固形燃料)事業の経緯が物語るが、県がシーリングで磨いた腕は、県民参加型予算(みんつく予算)への包括監査報告をみればよく分かる。応募案に対し「投票しよう!みんつく予算」と 県民に大々的に呼び掛けながら、集まった意見は全て無視し、市町との協議で企画内容を〝県色〟に変質させてしまっていた

▼その一つ「防災ベンチ」は、応募企画にはなかった「県産材使用」が条件に加わり、随意契約で発注。コロナ禍を理由に完成七カ月後も使用例はなく、県の会議で使われる程度。広報しないのはなぜかという監査人の問いに、担当課は「しないのではなく、延期している」

▼以前の監査報告で、規則の抜け穴づくりに「新ルール創設」という手口が指摘された。発想が共通している。手を変え品を変え―は企画力を絞り出す手段だが、手段自体マンネリの感がある。