伊勢新聞

大観小観 2022年2月18日(金)

▼理由もないのに不幸などが続くことがある。「2度あることは3度ある」「3度目の正直」などのことわざが生まれた背景だ。頼まれたからと弟が姉を殺したという事件に驚いた翌日、名張市で中学2年生が学校で同級生の首を切りつけた

▼市教委は、2人の間のいじめやトラブルは把握していないという。警察は何らかのトラブルがあったとみているらしい。それぞれの組織の特性として当然そうだろう。2人が同クラスだったのは1年前。加害少年や学校と被害少年の1年は同じはずもない。ネットなどでは昨年の弥富市での同級生刺殺事件との類似性が取りざたされている

▼同市教委も「いじめは認識出来なかった」としていたが、実は2人を別のクラスにして解決を図ろうとしていたなどが指摘されたりした。名張市の場合は首筋とはいえ切りつけた

▼「初手は突き、2度目はなどか切ら(吉良)ざらん 石見がえぐる穴を見ながら」は江戸時代の落首。老中を一刺しで仕留めた稲葉石見守の故事があるのに浅野内匠頭は斬りかかって吉良上野介を逃がしたことへの皮肉。日ごろの鍛錬、心の持ちようが2人の襲い方の違いになったともされる

▼本人推知報道を禁じる少年法が旧同法に盛り込まれたのはまねを防ぐためだったという。子どもはまねの天才。「2度あることは3度ある」も、不幸の重なりとは別に類似事件の続発も関係したのかも知れない。弥富市の事件では、少年は殺すつもりはなかったと供述しているという

▼思春期の心理をていねいに把握しなければ、いじめや、暴力事件の未然防止は難しい。