▼4月1日からの改正少年法施行で、18、19歳の「特定少年」が起訴後、実名報道が可能となることについて、報道機関の判断が問われることになるのとは別に、専門家の間で「公開の裁判は実名が原則」「更生の妨げになる」などで賛否が割れているという
▼いずれも法の成立時の趣旨とは大きく変わっていることは否めない。少年法61条が氏名など本人を推知できる報道を禁じているのは家裁の審判や起訴された少年だが、実際は逮捕、逮捕前に拡大されている。同法がそっくり引き継いだ戦前の旧法が禁止事項を盛り込んだのは、報道されることで模倣犯の多発を防ぐためで、更生重視の流れが条文と運用のギャップとなった
▼「公開の裁判は実名が原則」というのも、時代の変遷がある。「裁判の公開の原則」は、戦前の密室裁判の反省から。裁判が公正に運用されているかを市民が監視するのが本旨で、被告の実名とは別の問題である
▼報道機関は成人に対しては原則実名発表を警察に求め、報道の仕方は自ら判断すると言い続けてきたが、少年事件ではぶれがあり、実名、匿名に大きく分かれた時、新聞協会は事件の重大性よりも年齢での一律規制を提案している
▼個人情報保護法施行後、容疑者とは別の人物の写真を誤って掲載した報道機関の幹部が「前は警察が用意してくれたからこんなミスはなかった」とぼやいていた
▼写真週刊誌として一時200万部を超えた『FOCUS』は、田中角栄元首相の法廷での姿を盗撮して躍進し、少年事件の顔写真掲載を機に衰退した。国民に見識があった時代である。