伊勢新聞

2022年2月11日(金)

▼フジテレビ系のトーク番組『ボクらの時代』で劇団出身ベテラン俳優3人が出演。73歳の角野卓造さんが修行時代について「有難かったのは怒られたこと」

▼互いの演技力がかみ合わねば芝居が成り立たない。「芝居への情熱が乱暴なことを言わせた」。「その権化みたいな人に師事していたから」と59歳の松重豊さん。灰皿が飛んでくるだけではなかった。「直接浴びたおかげで、この世界に何とかしがみつけたと思う」

▼ポンと膝を打つのは松重さん以上の年代だろう。角野さんは「後輩に対して(そんな)熱い思いで接しているかというとクエスチョン」。いま通用する考えではないということでもあろう

▼三重県志摩市が市消防本部でパワハラ行為があったとして40代の3人を懲戒処分にした。最も重いのは約10年間、部下10人以上に暴力、暴言を振るった消防司令長で停職3カ月。次いで3年間、最高6時間の叱責や説教を繰り返した40代消防指令補で停職1カ月。軽かったのは6年間、深夜の自身の食事会の送迎など私的に部下を使った消防司令で減給1カ月

▼橋爪政吉市長が「市民の命や健康、財産を守る消防組織において、ハラスメントを行っていたことを大変重く受け止めている。職場環境改善に全力で取り組む」。暴力、暴言、常軌を逸した長時間の説教が今の若い世代に通用するはずもない

▼が、命が関わる危険な仕事だけに、再発防止には弁護士によるハラスメント研修だけでなく、指導方法の研修も必要だろう。それがあって、部下の私的利用が最も軽い処分になることに素直にうなずける。