伊勢新聞

2022年2月10日(木)

▼前回の三重県の名張市長選で敗れ、同市議に返り咲いていた森脇和徳氏は再度挑戦することについて、現職の引退表明がなくても「出馬を決めていた」。同じ市長選で敗れて県議に復帰していた北川裕之氏は「県議の任期を全うすべきだと思って熟慮してきたが、名張の新しい時代を市民と一緒に作りたいという強い思いで」

▼一騎打ちの可能性濃厚らしいが、市民は変わり映えしない顔ぶれかと関心が薄れるか、市を思う不屈の精神と改めて刮目するか。北川氏の「県議の任期」へのこだわりは、前知事の鈴木英敬氏が「任期を全うする」としながら国政に転出し、そのことを会派として批判した。ある種後ろめたさがあるか

▼「熟慮してきたが、決断した」という論理の展開はその鈴木氏に似ているのがおもしろい。県議会議長を3回務めた故岩名秀樹は、県議初当選のころから国政進出を嘱望されていたが、初挑戦で惨敗。二度と国政は目指さないと支持者に約束して県議に戻った。議会改革で大きな功績を残したが、市長選に出馬して敗れた

▼県議会議長を務めた乙部一巳氏は「利口じゃ政治家にはなれんよ」と言っていた。落選を繰り返した体験からだが、「利口」というのは、利益を考えては政治家などできないということだ

▼「議会の力がこれほど強いとは」と言ったのは北川正恭元知事。執行権と議決権に本質的違いはないのかもしれない。北川裕之氏が市長選に敗れた2県議と県議復帰を表明した時「落選3人組」と書いたが「県議として再出発し、機を見て再挑戦しても特に非難されることではない」とも書いた。