伊勢新聞

2022年2月9日(水)

▼新型コロナウイルスの新規感染者が7日ぶりに500人を下回ったが、月曜の発表としては過去2番目。三重県は「まだ第6波のピークアウトを判断するような状況ではない」。おや、また聞き慣れない言葉が

▼ピークアウト―広辞苑にはないし、手持ちの英和辞典にも見当たらないが、ネットで検索すると「頂点に達すること。また、そこから減少に転じること」。景気循環を表す経済用語として使われていたのがにわかにコロナの状況説明に用いられるようになったらしい

▼「クラスター」や「ソーシャルディスタンス」「ロックダウン」など、コロナ禍になって知らぬ言葉をよく覚えた。本来の意味とは違う言葉もあり、知識がいつまで役に立つかは分からぬが、どの程度市民権を得ているか、文化庁が「国語に関する世論調査」で発表していた

▼「ウィズコロナ」は不評だったが、ほかは6割以上が使用に賛成している。ほかに適切な用語もないということもあるのだろうが、当然ながら年代別に差はある。「ソーシャルディスタンス」は18~19歳の81・3%が支持しているのに対し、70歳以上は33・8%。ほかもほぼ同様。理解の程度とも連動しているに違いない

▼7日は70代男女ら3人が死んだ。前日は80代。高齢者の死亡が相次いでいるが、ピークアウトの早々の使用は、この年代に配慮していないことを物語っていないか

▼目視体験ながら高齢者のマスク着用率は高い。大きな声や言葉を発する頻度が減り、発声器官の筋肉が衰えて誤嚥(ごえん)性肺炎の死者が増えていると医師で作家の鎌田實さんが言っていた。