伊勢新聞

2022年2月8日(火)

▼パチンコで負けが込んで店内の備品に火をつけた事件で、自分を見失うギャンブルの中毒性の怖さを先に書いたが、異様な事件は続く。三重県四日市市では82歳の夫が妻を包丁で刺傷。亀山市のタクシー会社経営は同居女性の6歳の長男を結束バンドで縛った。四日市市の母親は3歳の長男を掃除機の先端で殴打している

▼警察が虐待を児童相談所に通告した件数は昨年10万8050人で過去最多。刑法犯の認知件数が7年連続で戦後最少を更新したことと対をなしている。パチンコ店の女性店員を殴った事件も合わせ、いずれも力の強い者が弱い者へ向けられた行為。何でもかんでもコロナに結びつけるのは危険だが、ストレスのはけ口とは言えないか

▼3歳児を掃除機でたたいた24歳の母親は「子どもの態度に腹が立って」と供述している。どんな態度を取ったとしても通常、3歳児にまともに怒りを爆発させることはあるまい。そうせざるを得ない何かがあったということだろう

▼妻に切りつけた男は、自分の病院の問題で口論となり「殺そうと思った」というまで激高している。詳細は分からぬが、一般に負い目があるほど人はかたくなになり、干渉にハラを立てる。独り暮らしの高齢者に対する給食配給や、困窮者を子ども食堂へ誘う際、運営者らがもっとも気を付けるのは、その感情だという

▼民法改正の要綱案で、法制審議会の部会は親が子どもを戒める「懲戒権」の削除を決めた。それだけ虐待が増え、「しつけ」が主張されるということだろうが、それだけの問題ではないことを、今の虐待増加は物語る。