伊勢新聞

大観小観 2022年2月6日(日)

▼県の外郭団体「県厚生事業団」が運営する障害児入所施設で、職員が入所児童に日常的に虐待していたという報道は衝撃だった。その創設に献身的に努め、望んで初代施設長になった県職員や、その後の施設長らと親交があり、文化行事などに娘らと参加して、入所児童らと交流していたからだ

▼県は厳しい言葉を浴びせる心理的虐待を認定したが、発見のきっかけは児童の顔に職員の靴底の形と似た靴跡が見つかり、施設側が「虐待の疑い」を県に通報したからだ。聞き取りに職員は「一緒に転んでしまった際に跡が付いたのでは」と釈明。県は身体的虐待は認めなかったが、この靴跡がなければ心への傷はより深刻といわれる言葉の虐待は見つからなかった可能性が濃厚だ

▼県が毎年実施している外郭団体の審査報告書。県子ども・福祉部所管の3団体のうち厚生事業団は令和3年度、目的、経営計画、事業、経営状況の全4項目で唯一オールAだ

▼特に障害児入所施設は「障害者総合支援法に沿って利用者本位の支援に積極的に取り組んだ」と県は分析。知事も「入所施設におけるセーティーネット機能の一翼を担って」、事業目標を達していると高く評価している。昨年9月の問題発生と、同12月の当該職員、施設長への戒告処分などは何も反映されていない

▼障害児施設は昔、暴れる児童をカギのかかる部屋に入れ、死亡させたことがある。是非を巡りさまざま議論があったが、教訓は生かされたか。「再発防止の改善計画を策定」という原因の解明を棚上げしたかのお決まりの担当者の説明だけでは分からない。