伊勢新聞

2022年2月3日(木)

▼犯罪にはやり廃れがあるのかどうか。世間を騒がす事件が起きると類似の事件が相次ぐ。最近では「放火」か。伊勢市のパチンコ店で、男性客がトイレのペーパータオルに火をつけ、タオルボックスやフロアマットの一部などを焼損させた

▼「負けが続いたことからイライラし」ていたためという。パチンコ台のガラス面をドンドンとたたく、大声をあげる、引き上げ際に足で蹴る、などはたまに見かけたが、火をつけたとなると、25人が犠牲になった大阪のクリニック放火事件との距離が一気に縮まる思いがしてヒヤッとする

▼1カ月前にもパチンコ店のアルバイト女性店員の頭を客が殴った事件があった。平成24年には炎天下のパチンコ店駐車場で、ゼロ歳児を車に乗せたまま、母親がパチンコして死亡させた。日本のギャンブル依存症率は世界でも高く、大半はパチンコという調査もある

▼世界保健機関は平成4年にギャンブル依存症を精神疾患と認定したが、令和元年には「ゲーム障害」も加えた。カジノが中核施設のIR推進法成立に伴い、国はキャンブル依存症基本法をつくり、射幸心をそぐ新台への移行を促す

▼一方、公営ギャンブルはむしろ逆の傾向で、フリーアナウンサーの徳光和夫氏はネットでの券購入によって全国の小さな競技場に居ながらにして参加できるとして、定期預金3件を解約、生命保険も解約中とテレビの人気番組『徹子の部屋』で酔ったように語った

▼上級国民、下級国民などの呼称が飛び交う時代だが、ペーパータオルに火をつけて憂さを晴らすなどは考えもしないに違いない。