伊勢新聞

2022年1月28日(金)

▼皇室の新年恒例行事「歌会始の儀」の今年のお題は「窓」。入選者最年少の高校1年生は「窓の外見たつて答へはわからない少し心が自由になれる」と詠んだ。どうして答えが分からないのかと苦しい気持ちで窓の外を見たら、少し楽になった―という趣旨の句意だとNHKは報じていた

▼ああ我もまた、その年頃に何十度、苦しい思いをしたか。が、うかつに窓の外へ顔を向けることなどできなかった。「キョロキョロ顔を動かさない」という担任の叱声が飛んできたのだ。さりげなく目を答案用紙から離し、天を仰いで考えるそぶりをしながら、隣の解答用紙がのぞけぬものかと願ったことは1度や2度でない

▼大学入学共通テストで、スマホのアプリを使って外部から答えを得るカンニングが発覚し、関係者を仰天させている。かつては鉛筆や消しゴム、下敷きに書き込む程度だったが、今は携帯、スマホ。カンニング効果は拡大し、使われたと驚く関係者の方が驚かれる時代なのかもしれない

▼カンニングは、おそらく試験というものと同時に登場したのではないか。学生のころは友人や学習雑誌の成功体験に酔った。効果的でかつバレない方法が思い浮かんでいたら、センター試験や大学入試は畏れ多くても、中間、期末試験では試みた気がする

▼三重会場でもスマホを太ももに挟んで臨み、失格になった受験生がいたが、成功したのはオンライン授業などでも使うアプリを利用した手口で、発覚は氷山の一角の懸念はある。「まさか」や「性善説だった」などの声が、ご多分に漏れず、関係者から出ているらしい。