伊勢新聞

2022年1月21日(金)

▼「十日の菊六日のアヤメ」は、必要とするときに間に合わず、手遅れの例え。ピンぼけの意味もあろう。一見勝之知事は南太平洋・トンガ沖噴火に伴い16日未明に県内に発令された津波注意報に、どの対象市町も避難指示を出さなかったとして、3日を過ぎた19日、市町に対応の見直しを求める考えを示した。求めるのは同日か、翌日か、翌々日か。すでに「求めた」のではないらしい

▼10人の死者・行方不明者を出した平成16年災害はじめ大災害後の対策で、県防災対策部が最も頭を悩ましたのは風化の速さ。「被害の心配はない」の発表から5時間後の未明の津波警報・注意報の発令で揺れた気象庁が「経験ない潮位変化」「今後迅速に発表」などとしているほどの気候変動時代の災害で、「十日の菊」ではいささか心もとない

▼16日未明、県も災害対策本部を設置して情報収集に努めたとされるが、知事の指示は特にない。市町の現場には生かされなかったということである。尾鷲で漁船転覆、鳥羽市でカキの養殖いかだ500台が流され、一部が破損。同市で39世帯63人、大紀町で3世帯3人、鳥羽市で2世帯5人の自主避難している

▼就寝して気づかなかったという養殖かき業者は「もう少し早く(注意報を)発表してくれたら準備ができた」。真夜中の被害の甚大さは、国の先月の想定でも指摘された通り。警報・注意報を県民、市町民にいかに迅速に伝えるかは県、市町の責務であることは言うまでもない

▼自民県連がかき業者、ノリ業者への支援を知事に要請した。後の祭りにしてはならない。