伊勢新聞

2022年1月18日(火)

▼南太平洋・トンガ沖噴火に伴う津波警報・注意報の発令は全国各地で混乱を巻き起こしたようだ。県でも伊勢湾沿岸や県南部に注意報が出され、最大0・5メートル程度の波が観測されたが、15日午後に気象庁は津波の心配はないと発表し、数時間後に警報・注意報に切り替えられ、何事が起きているのかとテレビの画面にくぎ付けにさせられた

▼異例の潮位の変化など、難しい判断を強いられたというが、担当官が「このような事態に遭遇したことがない」という説明に驚いた。地震予知が幻想に過ぎなかったことはこの10年ほどで思い知らされたが、海底火山と潮位の関係についても、現段階では仮説の域を出ない現状という思いを新たにする

▼地震津波に比べて火山津波はまれだとして予測の困難さを強調する同庁に対し平成12年、北海道・有珠山噴火を的確に予想した岡田弘・北海道大学名誉教授は「当然想定すべきこと」。かつて成果主義への傾斜に伴う国の予算配分で、火山観測所の統合や研究者不足が進んでいると警鐘を鳴らしていたが、陸上さえそうなら海底火山は推して知るべしということだろう

▼コロナ禍で散々見せつけられてきた効率重視の落とし穴をここでも見る思いがするが、南海トラフで津波には敏感にならざるを得ないはずの県の動きがよく見えない。ホームページに国発表の観測一覧表が掲載されている以外に津波情報はなく、災害対策本部にアクセスしても「緊急、関連情報はありません」

▼気象庁は注意を呼び掛けていたが、早々削除してしまったか。知事もいまこそ防災服の出番である。