伊勢新聞

<まる見えリポート>名張市長引退表明 5期20年に幕、福祉推進も脇の甘さ

【今期限りでの引退を表明する亀井市長=名張市南町で】

三重県の亀井利克名張市長(69)が次期市長選への不出馬を表明し、亀井市政は5期20年で幕を下ろす見通しとなった。肝いりの福祉政策は全国的に注目を集めたが、財政難や相次ぐ不祥事への対応に追われ、後年は自らにも脇の甘さが見られるなど、足元は揺らいだ。引退表明を経ての焦点は次期市長選の行方。亀井氏が後継指名を否定する中、政界関係者らは各方面の出方をうかがう。

「体の動くうちに身を引きたい」。13日夜、後援会主催の「新春のつどい」で引退を表明した亀井市長の表情から「元気」は見て取れず。流ちょうな冗談で会場を笑いの渦に包み込む在りし日の姿はなかった。

もともとは市職員。入庁時に「俺は市長になる」と同期に語っていたという。その言葉通り県議を3期半ばで辞職し、平成14年の市長選で初当選。いわゆる「斎場問題」の解決を掲げて当時の現職を制した。

市民の健康相談に応じる「まちの保健室」や子ども発達支援センターの開設など、先進的な施策を展開。フィンランドの施策になぞらえて「名張版ネウボラ」と評価され、WHO(世界保健機関)も視察した。

他方で深刻な財政難に苦しみ、固定資産税を独自に上乗せ。支出の根拠をでっち上げた不正会計問題をはじめとして庁内では不祥事が相次ぎ、温浴施設の無料券を一部に配布した問題では自らも批判を受けた。

その傍らで誰もが評価するのは質素さ。自宅は築100年の「キリギリスのあばら家」(関係者)で、雨漏りもビニールシートで取り繕うほど。政治家からの人望も厚く、鈴木英敬前知事の「相談役」でもあった。

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ベッドタウンの宿命でもある団地の高齢化、延長となった固定資産税上乗せ、火災や事故が相次ぐ伊賀南部クリーンセンターなど、市の課題は山積。市政運営は市長選を制するより険しい道となるに違いない。

今のところ任期満了に伴う市長選(4月10日告示、同17日投開票)に立候補する見通しとなっているのは、前回市長選で亀井氏に敗れた森脇和徳市議(48)。月内にも記者会見を開いて出馬を表明する方針だ。

同じ自民党系でありながらも亀井批判の急先鋒で知られる森脇氏。〝亀井派〟が大勢を占める市議会では珍しい存在だ。温浴施設の無料券を巡る問題では亀井氏に支出の賠償を求めて住民監査請求を起こした。

そんな事情もあり、多くの政界関係者は「無投票にはならないだろう」と見立てる。水面下で立候補の可能性が取り沙汰されているのは、森脇氏と同じく前回市長選で敗れた北川裕之県議(63)=同市選出=だ。

「亀井さんが支援するなら北川氏だろう」(亀井氏周辺)との声もある一方、北川氏は県議会の最大会派「新政みえ」の屋台骨でもある。北川氏は取材に「どうコメントするかも悩ましい。熟慮中」と語った。