伊勢新聞

2022年1月9日(日)

▼「備えあれば憂いなし」は中国古代の歴史書『書経』の一説。新型コロナウイルス対策を施策の第一にあげていた一見勝之知事が、第6波に備えて昨年10月に策定した指針「みえコロナガード」の真価が問われる事態になりそうだ

▼「第6波がそこまで来ている。油断なく対応」と言ったのが6日の年頭会見。翌7日には臨時会見を開いて「第6波襲来」と述べ、感染対策の徹底、会食の4人以下を求めた。さらに8日には「コロナガード」に基づき独自のアラートを発令する構え。あきれるほどの急変である

▼第5波までは、なかなか到来を認めようとしなかった。特に5波は、認めた時は手がつけられないほど広がっていて、後追いの対策を余儀なくされた。ワクチン接種率の向上と沈静化が重なった感があった。今回も3日連続で対策に迫られ、後手後手に回った印象が強い

▼2日連続で17人以上の感染者が出た場合に「自動的にアラート発令」と規定しているが、その2週間後に急増した第5波を基準にしている。その時のデルタ株の約4倍の感染力とされるオミクロン株の備えとして十分だったかどうか

▼県は感染者の市町別を「個人の特定や感染者への中傷の恐れ」を理由に今年から明らかにしなかったが、7日に元に戻した。可能な範囲で明らかにしてきたとみられる感染経路も、アラート発令段階で公表することにしている

▼結果的に、朝令暮改。県民に求める「感染対策の徹底」や県自身の「油断なく対応」と矛盾する。油断しなければコントロールできるという致命的な認識不足があるのかもしれない。