伊勢新聞

2022年1月7日(金)

▼ニュースを扱う仕事をしていて「自分がニュースになってどうする」というのが、仲間うちでのそうなったときの自嘲を込めたジョークだ。法違反者を取り締まる仕事の警察官の場合はどうか

▼本紙の年末恒例の企画記事『みえの事件簿』。その年を象徴する重大な事件を、改めて警察に取材し直すなどして振り返るのだが、昨年は上下二回のうち一回が「警察官不祥事多発」だった。警察不祥事がニュースで大きく取り扱われるのは昔からとはいえ、警察そのものが『事件簿』に登場するのはちょっと記憶にない

▼「警察がニュースになってどうする」などと警察官の仲間うちで言い合ってはジョークにならないが、県警本部の仕事始め式で佐野朋毅本部長が「警察の仕事は県民の信頼があってこそ初めて成り立つ」。と言いながら、一年を象徴したと受け取られている警察官不祥事に具体的見解を述べないのは、ほかの組織ではあまり見られることではあるまい

▼「信頼の確保を念頭に置き、健全な常識を持って物事を判断する」。「信頼の確保」というより「信頼の回復」であり、「健全な常識」が健在かどうか、この機にみずから見直してはどうかと苦笑しながら突っ込みたくなる

▼刑法犯認知件数が減る一方、強制性交等や強制わいせつの重要犯罪は増えているともいう。警察官不祥事の中身もそうである。交通事故にしろ「詳しい原因を調べている」というだけで、その結果の公表がないのが定番。特に警察官が当事者の場合、再発防止策とともに公表することが県民の信頼確保に欠かせないのは言うまでもない。