伊勢新聞

2021年12月30日(木)

▼年も押し迫った28日、前衆院議員の川崎二郎氏が伊勢新聞社に来社。同日付で自民党県連会長を退任する意向を小林千三社長に伝えた。「いつまでも背負っているわけにもいかない」。引退表明後の手順の一つだろうが、ニュースを仕事とする本紙への少し早いお年玉というところか。少し早いのは新聞の使命である

▼破顔一笑。前回衆院選の屈辱を一掃し、川崎4代のバトンタッチを成し遂げた上機嫌とみえる。同日の本紙企画『一年を振り返って』は、今回衆院選の自民の「世代交代」を掲げての勝利を伝えている。県連会長として、模範を示して戦いをリードし、有終の美を飾った満足もあるのかもしれない

▼初入閣した運輸大臣として平成11年に発生した能登半島沖不審船事件の陣頭指揮をとり、海上保安庁に威嚇射撃を命じ、海上自衛隊護衛艦船の北朝鮮海域までの追走とともに日本中の耳目を集めたが、「良質な情報が持つ価値は高い」と本紙を激励したのは、そうした体験のたまものか

▼東京一極集中に対する強い懸念も示した。「物事を考える構造も含め、全て東京が中心になってしまった」

▼阪神淡路大震災などで首都機能移転論が盛り上がったのは平成7年。「組織を揺さぶると、問題点が明らかになる」と当時の北川正恭知事が徐々に乗り気になったが、当初予想された愛知、岐阜両県との連携ではなく、独自に「畿央地域」を掲げて、国会等移転審議会が選定した3移転候補地の一角に食い込んだ。川崎氏の影響といわれた

▼思いは変わらず、さらに強く、か。地方議員としての職分を貫いた。