伊勢新聞

2021年12月29日(水)

▼日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」は今年は「金」。オリパラの金メダルに沸き、飲食店への休業支援金などの給付金や将棋の藤井聡太棋士の最年少四冠などの金字塔などで、投票が多かったと分析するが、今年はまた、コロナで貧困が加速された年でもあった。「金」の一字に複雑な思いをする向きも多いに違いない

▼一見勝之知事が発表した「今年の一字」は「変」だった。「変異株」拡大が県民の脳裏に「恐怖」の2文字を刻み込んだことがすぐにも連想されるが、一見知事が選んだ理由は、第一に自身が知事就任から3カ月、「コロナ対応に忙殺された」からという。「変」の選択は同じでも、県民と知事で思いの隔たりは大きくないか

▼こちらが実は本旨と思われるのは「もちろん私自身の生活が変わったことも入っている」の方。仕事とともに、あまり本意ではなかったように見受けられる「住むところも変わった」ことをあげる。「変異」というより「変化」、それも〝個人として〟の変化がいまのところまだ鮮烈ということか

▼三重とこわか国体・同大会の「延期しないという決断」を就任3カ月を振り返った一番の〝実績〟にあげ「新型コロナの対応に全力を挙げ、みえコロナガードやコロナ大綱も公表した」と続けた。延期決断を、決断というより「幻の国体」と指摘したのは津市の前葉泰幸市長である。みえコロナガードやコロナ大綱は、県民の実感にはまだあるまい

▼県民とかみ合っていない、ふわふわと、雲の上を歩いているかの気分の知事の現在を「変」の一字は表しているのかもしれない。