2021年12月28日(火)

▼新型コロナウイルス第2波下の昨年8、9月、順天堂大学医学部や大阪国際がんセンターの医師らのチームが体調の変化についてネット調査をした結果、孤立感を持つ人に体の痛みが広がっていた。ストレスが痛みを発症することは知られている。当然の結果だが、がんセンターの医師が加わっていることが気になった

▼「ストレスはがんを呼ぶ」というのは三重県出身の医学博士星恵子著『ストレスと免疫』の一章だ。ストレスが免疫細胞の機能を弱め、がん細胞を見逃してしまうという。コロナ感染回避行動の結果、がん検診率が低下していると言われる。結核患者も増えている。がんセンターの医師の関心は高いに違いない

▼結果は、コロナの流行で、頭や首、腰などに痛みを感じる人が2%強増えていた。孤立感のある人は、ない人に比べ5・5倍のリスク。もともと痛みのある人はさらに症状が悪化していた

▼ストレスと痛みについては、小説家夏樹静子さんが書いていた。全身に耐えがたい痛みが走り、数軒医療機関を訪ねて、ストレスと診断され、執筆をやめなければ死ぬと宣告された。新型コロナは、それ自体の重症化とは別に、気づかぬ形でさまざまなリスクを社会にもたらしている

▼コロナ禍に伴う引きこもりの増加は最も顕著な一つ。県の調査では1270人。国の調査からの推計では8570人存在するという。うつへの進行からの自殺増加などが警戒されている。痛み調査はそのリスクが足元に迫っていることを物語る。オンライン化とともに、どう孤立させないかの相反する施策が求められる。