三重県津市南新町の津少年鑑別所は、「三重法務少年支援センター」という名称で、専門知識を持った職員が、子どもや保護者、行政や児童福祉職員らの相談に応じている。県警やセンターによると、少年の補導人数はここ10年で減少傾向にあるが、センターへの相談件数は近年増加している。法務技官の雨宮靖樹さん(42)は「悩みに対して具体的な提案ができたらいいと思う。子どもたちの健全育成に寄与したい」と話す。
三重法務少年支援センターが受ける相談内容は、家庭内暴力や校内暴力、窃盗、ゲーム依存症、自傷行為、援助交際など多岐にわたる。平成30年に46件だった相談件数は、令和2年に152件、今年は12月14日時点で251件に増加。公認心理師や社会福祉士などの資格を持つ職員らが、検査や心理テストなどを基に子どもたちの特性に合った助言をする。
子どもたちの相談に乗る上で、「言い分を聞く」ことを心がけているという。例えば、暴力行為を起こした子どもに対して頭ごなしに怒るのではなく、「なぜ暴力を振るったのか」、「どういう気持ちで行動を起こしたのか」などを聞き、言葉を掛けている。
池村寛之首席専門官(43)は「子どもたちが安心して元気になっていく姿を見ていると支援してよかったと思う」と話す。
センターでは、保護者や子どもらだけでなく、関係機関からの相談にも応じている。
刑務所や少年院を出所した障害者らの支援に取り組む「県地域生活定着支援センター」(津市桜橋二丁目)の小野田正晴所長(73)は「コミュニケーションが取りにくいときや、感情が把握できない場合などに、心理的なアドバイスをもらえるので心強く感じている」と語る。刑務所を出た高齢者や、少年院を退所した人は住むところを断られることも多いという。小野田所長は「道を踏み外すと、なかなか立ち直れない人もいる。一回でも失敗したら許さないというのではなく、人に対する寛容さが大切」と語る。
少年の非行を未然に防止しようと、警察でも四日市南署、津署、伊勢署、名張署の県内四つの警察署に少年サポートセンターを設置し、少年補導員が少年の非行防止や、被害を受けた少年の支援活動に取り組んでいる。
こうした中、少年の犯罪防止などで連携を強化しようと、津少年鑑別所(三重法務少年支援センター)と県警は7月、問題行動を起こした少年の支援活動に両者が連携して取り組む協定を結んだ。
今月8日には、津署で津少年鑑別所地域援助推進協議会が非公開で開催され、センター職員や少年補導員計23人が出席。協定に基づき、少年の非行からの立ち直り支援活動について意見交換をした。
県警少年課の山門裕行次長は「警察だけで考えると難しいことでも、専門家と相談することでやりやすくなった。関係機関と連携しながら、少年の非行を防止していきたい」と話した。