伊勢新聞

2021年12月24日(金)

▼戦前・戦中にかけて内政全般に強大な権限を振るった内務省が昭和22年に解体された時、後に警察庁長官や官房長官を務めた内務官僚の後藤田正晴は憤慨し「内務省を復活させなければ死ぬに死ねない」と言ったとされる。解体後の中核組織、旧自治省出身の前葉泰幸津市長が、やはり中核組織、警察庁に連なる県警出身者を副市長に起用案を議会に提出し、承認を得た。心中、いかばかりか

▼現役警察官をトップに、元警察官らで構成する市長直轄の「内部統制室」が4月発足し、職員が不当要求などに巻き込まれたら前面に出てくる。津市に警察官の一大派閥が出現した印象。不当要求か、正当な、あるいは無知などによる抗議かは彼らが判断するのだろうから、実質戦前・戦中の内部統制とオイコラ警察復活の感がある

▼詐欺容疑で逮捕された元自治会長問題の再発防止策だが、同会長の要求も〝不当〟ばかりではなかったことは市の調査報告でも議会百条委員会の審議でも明らかになっている。〝恐怖政治〟が横行することがないよう新副市長には期待したい

▼再発防止策が外部への威嚇と内部統制にほぼ限定され、人権施策の方は担当理事の廃止と、統括を課に縮小しただけで、改善策について何も発表がないのも拍子抜けさせられる。県内市町ではトップクラスの人権体制だと、前葉市長が県人権・同和教育研究大会で大見えを切ったのは「いやあれは芝居で」ということになってしまうのか

▼外部圧力や内部統制体制を県警に依存するのはこれで何度目か。自浄能力という言葉は、知らないのかもしれない。