伊勢新聞

2021年12月20日(月)

▼引きこもりの人が県内で1270人と言う数字をどう見るか。うち男性が七割で、40代が最も多いという結果は、予測通りとはいえ、粛然とせざるを得ない。期間も「10年以上20年未満」が最多の約2割。就職氷河期や失われた10年に続く平成20年のリーマンショックとの関連が浮き彫りになる

▼「引きこもり」という言葉が注目を集めるようになったのは川崎市の通り魔事件であり、それに続く元農林水産事務次官による長男殺人事件。県が対応策の検討を始めたのもそれを踏まえてのことだが、その当時内閣府の生活状況調査に基づく県の推計では40歳から64歳までの引きこもりは8570人。15―39歳がその大半を占めていた。数字上の大きな差は、基準に違いでもあるのか、県の調査が実態と開きがあるか

▼県が引きこもり対策としてこころの健康センターの「ひきこもり地域支援センター」をつくったのは平成25年度だ。引きこもりの定義について「さまざまな理由から学校への登校、アルバイトや仕事などの外との交流を避け、原則的には『6ヶ月以上にわたって家庭にとどまり続けている状態』」とし、児童生徒や若年層に重点を当てているようにもうかがえる

▼コロナ禍での壮年の引きこもり増が指摘されている。県の人口当たりの自殺者数は全国平均を上回るともいう。引きこもりは疾患ほか複数要因が重なった結果として、県ひきこもり地域支援センターは「ストレスから身を守るため、外からの刺激を、自ら遮断している状態」

▼似て非なる事態としての対応が急がれる。