伊勢新聞

2021年12月15日(水)

▼国勢調査の目的の第一は政治や行政など公的な目的での基準となる統計数字を与えることである。総務省は客観的なデータに基づく公正な行政を行うためとして、同調査実施計画は活用例にまず「衆議院小選挙区の画定」をあげる。議員定数における重要性は「一票の格差」に劣らない

▼「一票の格差」も「国勢調査」も、規定しているのは国政選挙で、地方選挙を必ずしも拘束しない。地方の事情が優先される余地は大いにあろう。が、国勢調査の結果が決めたばかりの県議選定数と整合しないからといって「大きな乖離(かいり)はない」(青木謙順議長)などと解釈していいかどうか

▼負担軽減を理由に基幹統計である毎月勤労統計の調査方法を変更していた厚生労働省を思わせなくもない。定数削減になる地元伊賀市選出の稲森稔尚県議が「伊賀市が南部に議席を分け与える状況。乱暴なまとめ方は伊賀市民をばかにしている」。いわば当事者とも言える地元県議の主張を、議会での賛同者がほかにいないからといって多数決で押し切るのは、民主主義の根本理念からも少々筋を外していないか

▼定数が理屈で割りきれるものでないことは、議会の結論が二転三転したことでもよく分かる。人口増加時代に比べ、より難しいのも確かだが、地元県議が反対だったケースは定数問題に限らず、これまでもしばしばあった

▼大方は、手を尽くして理解を得て、反対に違いない地元の説得に当たってもらう。できなければ、強引な手段を用いて沈黙を守らせた。「乱暴なまとめ方」だったが、稲森県議の言う「乱暴なまとめ方」とは違った。