伊勢新聞

2021年12月7日(火)

▼最先端のIT技術に精通する中国人の若者らと仕事を通じて交流のある友人が聞いたそうである―「中国人はみんなそうなのか」。答えは「否」で、特に高齢者はほとんどITとは無縁という。「われわれと同じなんだ」と、還暦を超えた友人は、ざまあみろという顔をした

▼いつぞや日本でトップクラスの海運会社との懇親会で社員の採用について聞いたことがある。「シンガポールからが多い。言語能力など、日本の若者に比べて格段に上」という回答。英語を巧みに使いこなす韓国人の若者に米国滞在期間を尋ねたら1年ほどだったと、自身の会話能力と照らし日本の特派員が感嘆していた

▼アジア各国の若者は急速に能力や知見を高め、広げて、日本との間で若者ギャップというものが起きているのかもしれない。どの国でもまた、IT格差なる現象が起きているのだろう。「世界は大きく変わりつつある」と本紙『株式展望』で岡三証券投資情報部の嶋野徹シニアエコノミスト。「いや、もうひとつの世界が新たに生まれつつある」

▼実際に活動するのと同じ仮想空間「メタバース」が実用化されるという。人気テレビドラマ『スタートレック』に30年前登場した「ホロデッキ」が現実となる。スマートフォンが世界を変えたが「それよりももっと速い変化になる」

▼スマホに年代ギャップがあるかどうか。より複雑な情報格差は起きているに違いない。「われわれははじかれていく世代」と友人。デジタル庁などがもたらす社会の分断に伴い、こぼれ落ちていく勢いもさらに増大することになるのかもしれない。