2021年11月21日(日)

事件の責任の重さについては、結果の重大性が左右する。交通事故に対する県の処分も、相手の容体で重くも軽くもなる。鈴鹿市の小2男児を椅子で殴るなどしたとして父親が傷害容疑で逮捕された。一見勝之知事は鈴鹿児童相談所が児童の一時保護を解除した直後だったとした上で「解除は適切だった」

▼親の暴力などから子どもを守ることが目的の機関が「適切に解除」した直後に父親から大けがをさせられた。児童を虐待から守ることができなかった「適切」なお役所仕事とは何だろう

▼「父親の約束が履行されなかったのは残念」というが、深刻な虐待事件で、親が児相に二度と過ちを繰り返さないと誓うことは珍しくない。「今回の事案を分析することで、子どもの気持ちがあったとしても解除していいか検討すべき」とも語ったが、検討例はすでに複数ある

▼例えば平成24年の乳児死亡事件。北勢児相が保護を決め、乳児院が保育していた生後5カ月の乳児が一時帰宅の際、炎天下の車に放置され死亡した。県児童虐待死亡事例等検証委員会は、帰宅許可は児相と乳児院の緊密な情報共有の上で「潜在するリスクを認識して対応する必要があった」とし、両機関の連携、スキル不足を指摘した

▼精神を病む母親に代わって父親が保護を約束しての一時帰宅だったが、事件は母親が連れて出たパチンコ店の駐車場で起こった。家庭へ戻すことを一番に考える児相の保護方針が深刻な事態を引き起こすというのは事例に共通する指摘。例えば「父親の約束」「児童の帰宅希望」などを重視して判断することである。