伊勢新聞

2021年11月19日(金)

▼手をたたき大口開けて笑う芸―は全国紙の川柳欄に載った投稿。芸人人気は天井知らずだが、個人的には、普通の人が真剣に語る言葉がおもしろい

▼愛知県知事リコール署名偽造事件のテレビの特集で、署名運動代表の病院院長と応援団を買って出た名古屋市長の運動前と後の発言が紹介された。使用前、使用後の広告を見るようで笑みなく見てはいられなかった

▼三重とこわか国体・大会が中止になって、県スポーツ協会が一見勝之知事に「次の国体開催を決めてほしい」と要請した。「三期ほど知事をやっていただき」というのは、むろん県政のリーダーとしての資質がこの4年間で確認されてという前提で、国体のためにということではあるまい

▼前回並に46年も待つことなく、あるいは開会式に出席することを明言していた前知事が3期直前に辞任してほごにしたことの含みはあるかもしれない。地域のスポーツ活動や学校運動部活動の充実などを開催の意義にあげた。国体延期の可否を知事一任する時に条件にできなかったか

▼確かに、そんな用意ができないほどの急転直下だった。何が何でも実施するかの勢いが、前知事の辞任表明とともに急速にしぼんだ。「コロナのせいとはいえ」と一見知事はスポーツ協役員らに語ったが、延期断念の理由は、厳しい財政と再会場調整の困難である

▼新年度予算調整方針に20年以上記載し続けた財政状況を「厳しい」とする文言が消えるなど、説明にちぐはぐさが際立つ。来年のことを言っても鬼は笑わない季節になった。が、3期先ならどうか。県民は、笑えまい。