2021年11月12日(金)

▼「負の遺産」とは言わないが、前知事肝いりの事業に新知事が消極的になるのは県政裏面史の教えるところ。まして、このところ不振が伝えられ、議会から〝店じまい〟の声もある首都圏営業拠点「三重テラス」(東京・日本橋)について、一見勝之知事は「県の魅力を発信する場所が大消費地にあるのは重要」だと存続に前向きな姿勢を示した

▼「東京にいたときに三重テラスを何度も訪れた」という。自身が育った背景や関わった事案にこだわりをみせる知事だから、というわけでもあるまい。「県の魅力を発信する場所が大消費地」、すなわち首都圏に拠点を構えるかどうかはこれまで何度も繰り返し議論され、結局閉鎖。10年ほどの時を経て平成25年、三重テラスとして復活した

▼式年遷宮に先立つ3カ月前で、タイミングはよく、続く28年の伊勢志摩サミットで、食卓に出された酒や料理を中心に県への関心が高まった。マスコミ報道が急増したことが、大きな相乗効果となった。この成功に気をよくしてさらに積極策を打ち出すのではなく、逆に恐れをなして消極姿勢に転じたのが、県らしい

▼目標値を前年度より低くしたり、「量から質への転換」などと称し、特定の来館者対象に「三重の魅力体験者数」などの指標を編み出し〝責任転嫁〟を図った。行き着く先が尻すぼみになるのは目に見えている

▼費用対効果について、前知事は「単純に計算するのではなく」。具体策はなかった。一見知事は「検証していかなければならない」。あるにこしたことはない以上の検証が必要なことはむろんである。