伊勢新聞

<まる見えリポート>松阪・飯高に巨大風力発電計画  経産大臣「取りやめ」言及

【三重松阪蓮ウィンドファーム発電所の図面】

三重県松阪市飯高町に民間事業者が計画する国内最大規模の風力発電施設「(仮称)三重松阪蓮(はちす)ウィンドファーム発電所」に対し、経済産業大臣は環境保全面から「重大な影響を十分低減できない場合は、本事業の取りやめも含めた事業計画の抜本的な見直しを行うこと」を求めた。計画初期段階での異例な見解で、見直しが不可避の風向きとなった。

事業主体は再生可能エネルギーを手掛ける「リニューアブル・ジャパン」(眞邉勝仁社長、東京都港区)を母体とする合同会社。同市飯高町森の蓮ダムを中心とした約7434ヘクタールに高さ183メートルの風力発電機を最大60基建設する。総出力は最大25万1000キロワットを見込む。

事業想定区域は、室生赤目青山国定公園と香肌峡県立自然公園、奥伊勢宮川峡県立自然公園に指定されている。

周辺6カ所で風力発電施設が稼働し、7カ所で計画中。そのうち最大が新青山高原風力発電所の8万キロワットなので、蓮ウィンドファームの25万キロワットは桁違いの規模となる。

リニューアブル社は同市飯南町の白猪山(819メートル)周辺で風力発電施設を計画したが、「市有地への建設を承諾しないよう求める請願」を市議会が全会一致で採択し、計画は進んでいない。同市は平成30年、同社の環境影響評価準備書に対する知事への意見で「多くの不安や懸念の声が上がっている状況にあることを特に強調しておきたい」と伝えている。

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事業者は今年7月30日、環境影響評価法に基づき計画段階環境配慮書を公表した。

隣の大森正信大台町長は知事への意見書で、「町民の意見を重視し理解の得られない開発計画は賛同できない」と反対。

また「迷岳の山頂には貴重なブナ林やシロヤシオなどが自生している」「冬には樹氷・霧氷がみられるなど四季折々に魅力あふれる登山道がある」「大熊山三山(迷岳、白倉山、古ケ丸)と位置づけて情報発信をしている。自然環境及び景観の保全措置等に十分調査を講ずること」とくぎを刺した。

事業計画地に当たる松阪市の竹上真人市長は「地域住民等との合意形成を図るなかで説明会など理解を高める努力を十分行っていただきたい」と意見するにとどめた。科学的根拠が示されていない段階なので、「中立の立場」という。

鈴鹿セブンマウンテンに対抗して選定、PRしている「まつさか香肌イレブン」の迷岳(1,309メートル)や木梶山(1,230メートル)が事業地に含まれるが、触れていない。

一方、市民団体「みんなの飯高」も意見書1060通を集め、事業者へ提出している。飯高町の子育てサークルが勉強会で意見書を書こうと呼び掛け、多く集まったので、途中で公表に向け同団体を結成。737件(市内144件)を集計し、反対意見は9割を超えた。

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両市町の意見を踏まえたはずの一見勝之知事の意見は「事業計画を中止するか、事業実施想定区域の抜本的な見直しが必要」という一段と厳しい内容だった。全域が自然公園内で、国の特別天然記念物ニホンカモシカなど希少動物の生息が確認されているなどと説明している。

市長意見とは大違いの厳しい知事意見について竹上市長は「配慮書の段階でかなり厳しい意見。異例」とコメント。

白猪山麓に住む深田龍副議長も「極めて異例と受け止めた」と述べるとともに、「市民の感情を代弁していただいた部分もすごくある」と評価した。

経産大臣意見は10月12日に公表。環境保全のため風力発電設備の配置の再検討と事業実施区域の見直し、基数の削減を求め、「重大な影響を十分低減できない場合は、本事業の取りやめも含めた事業計画の抜本的な見直しを行うこと」と、知事意見を踏襲している。

風力発電設備の設置工事で「活用できる既設道路等が少ないことから、大規模な造成工事や道路工事に伴う土砂崩落及び河川・沢筋等への土砂又は濁水の流出等による動植物の生息・生育環境等への重大な影響が懸念される」などと指摘。

騒音や土地改変、生態系、景観など各論8項目のうち6項目で「重大な影響が懸念される」とされた。