伊勢新聞

2021年11月3日(水)

▼日本維新の会が比例区で得票率3位へ躍進したことに触れたのは共産党県委員会の大嶽隆司委員長だけ。「候補者のいない県内でも躍進したことに驚いている。野党共闘の取り組みが弱く、反自民の票が維新に流れたのでは」。その代表がいない本紙『県内各政党総括』はいつにも増して気が抜けた感じになったのは否めない

▼自民党県連の津田健児幹事長は「国民の信任を受けて勝たせていただいたことは事実」。立憲民主党県連の三谷哲央幹事長も国民民主党県連の金森正代表も、野党に厳しかった理由に、連合の股裂きをあげた。いずれもそうには違いないが、有権者の気持ちとはズレが広がった気がする

▼自民への「国民の信任」が、無条件とは言えないことも選挙結果は示していようし、連合の股裂きは今に始まったことではない。自民への不満の受け皿から立憲がはじかれたと言った方が現実に近いのではないか

▼「政権交代」を訴えたが、どれだけ有権者の心に響いたか。国会議員だけが、その言葉に酔っていた気がする。「自民の単独過半数は微妙」「立憲は上乗せ」などが大方だった報道機関の事前情勢分析も、現実とは一致しなかった。むしろ、低投票率に寄与した可能性もある。それなら、棄権してもいいかという層を増やした可能性だ

▼過去最低の投票率についても誰も触れない。政治が国民に見放されていく危機感はないと見える。党派ファーストかどうかが、例えば野党共闘にしても、結束か野合かの評価の分かれ目になる

▼争点不明のまま、世代交代だけが印象に残る選挙だったと言えようか。