伊勢新聞

2021年10月8日(金)

▼いつぞや鈴鹿市で犬の小便が鉄製の信号柱を倒したというニュースが流れた時、そういえば犬の同類だと女性のマユをひそめさせた電信柱に向かう男の立ち小便姿が見られなくなったと感慨ひとしおだった。急増した都市公園にトイレが常設され、コンビニのトイレも気軽に利用できる。衛生環境の変化が主な原因と思ったが、男性の6割超が「座りション」派になっているという調査結果を、生活用品メーカーのライオンが発表した

▼「トイレを汚さない」意識から切り替えたのが約半数で、子どもの頃から座りションを習慣づけられた〝ネイティブ〟が12%。むろん、指導はお母さんだろう。スマホの利用など、トイレ空間を〝活用〟する若者も座る派に変わってきているという。全国紙の投書欄で1、2年ほど前、断続的に半年間ほど、トイレ論争が続いた

▼火付け役は年配の女性のようだ。夫が小用でトイレを汚す。掃除する身になって、座れっという趣旨だ。共感する女性投書が続く。若い頃に比べ勢いが弱く、飛散するのだろうと、同病相哀れむで男性に同情した

▼懸命に働いて、老いで体が衰えた証しだろう。存分にしてほしい。私がいくらでも掃除する、という投書もあった。男性も参戦した。男性はサイホンの原理で排せつする。座ると十分機能しないことにご理解を―。それぐらい何ですかッのお叱りの投書もあった

▼ライオンによると、座っても内側に尿ハネして、便座裏が汚れるらしい。同社のスプレー式商品は60秒ですべての汚れを落とすという。論争している夫婦も思わず顔を見合わせないか。